アフリカ最大のeコマース企業Jumiaから生まれるナイジェリアスタートアップエコシステム
今回、ナイジェリアから生まれたアフリカ最大のeコマース企業Jumiaとそこから飛び出し新たに起業したJumiaマフィアたちを紹介する。
Jumiaとは
2012年に創業したeコマース企業。2015年の売上高は約1.5億ドルとなり、前年比117.8%増となっているアフリカ最大のeコマース企業の1つ。現在は、アフリカ11カ国に展開している。(ナイジェリア、コートジボワール、ガーナ、カメルーン、セネガル、ケニア、タンザニア、ウガンダ、アルジェリア、エジプト、モロッコ)
2012年5月 創業
TundeとRaphaelがKusuwa.comを創業
2012年6月 Rocket Internetからの出資
南アフリカでZandoの立ち上げに成功し、次の狙いをナイジェリアに定めていたAfrica Internet Holdingsの目に止まり、約250万ドルの出資を受ける。このときに、Oliver SamwerにスカウトされたHendrik Harrenが3人目の社員となる。
(Africa Internet Holdings - Rocket Internetがアフリカ地域に進出した際に立ち上げ、その後アフリカ通信大手MTNとMillicomが出資した。現在は、Africa Internet Groupという名前になっている。)
2012年9月 Sabuntaと合併
Rocket Internet傘下でファッションeコマースを展開していたSabuntaと合併。Jumiaに変更。
2012年10月 JP Morganから出資
金額は公表されていないが、"real turning point"だったと創業者は語っている。
2013年3月 シリーズA
Summit Partnersから2600万ドルの資金調達。
2013年6月 シリーズB
アフリカ大手通信会社Millicomから3500万ドルの資金調達。
2014年11月 シリーズC
Summit PartnersとMillicomから1.5億ドルの資金調達。
2016年3月 資金調達(Africa Internet Group全体)
仏保険大手AXA、Goldman Sachs、MTN、Rocket Internetから約3.3億ドルの資金調達。
2016年4月 資金調達(Africa Internet Group全体)
通信大手Orangeから8500万ドルの資金調達。
創業者
Tunde Kehinde(右)
ナイジェリア生まれ。アメリカのハワード大学卒業後、米金融機関を経て、イギリスの酒造メーカーでアフリカ展開のための買収戦略などを手がける。そして、2011年にハーバード・ビジネススクールを卒業し、ガーナ人の同級生とともにアフリカのエリートのためのSNSサイトBandeka.comを立ち上げた。2012年にRaphaelと出会い、意気投合してKusuwa(後のJumia)を創業する。2014年1月にJumiaを辞め、ACE(下記参照)を立ち上げる。現在、34歳。
Raphael Afaedor(左)
ガーナ生まれ。チェコの大学でコンピュータサイエンス(学士、修士)を、スイスの大学でマーケティング(修士)を学んだ後、2007年にハーバード・ビジネススクールに入学。卒業後は、米大手求人サイトMonster.comのプロダクト・マネージャー、アフリカ北西部の大手農薬メーカーでマーケティング&セールスのトップを務める。2011年にナイジェリアで、グルーポンに似たサービスQluQluを立ち上げる。2012年にTundeと出会い、意気投合してKusuwa(後のJumia)を創業する。2014年にJumiaを辞め、Supermart.ng(下記参照)を立ち上げる。現在、37歳。
Jumia マフィア
Jumiaをアフリカ最大のeコマースと言われるほどに大きく成長できた要因として2つのポイントを挙げている。1つ目は、資金調達であり、ただ単に金額が大きかったということでなく、ノウハウやネットワークをもつ会社と連携することができたのが効果的だったと述べている。そして、2つ目が採用である。「The best people for the best team」を掲げ、国内外問わず若く優秀なナイジェリア人とRocket Internetから来た経験豊富なメンバーが集まったことが非常に大きかったという。
アメリカのフェアチャイルドやペイパル、日本のネットエイジから数々の偉大な起業家が輩出されていることから分かるように、黎明期の激動を乗り越えたスタートアップからは多数のスタートアップが生まれる。そこで、Jumiaマフィアから生まれたスタートアップを7社紹介する。
会社名: ACE (Africa Courier Express)
創業者:Tunde Kehinde、Ercin Eksin
事業内容:eコマースのための物流・配送サービス
備考:2015年2月には、SafaricomのCVC、Interswitch、Africa Angels Networkから300万ドルの資金調達を行っている。
会社名:Supermart.ng
創業者:Raphael Afaedor
事業内容:生鮮品eコマース
備考:現在、70000点以上の商品を扱っているナイジェリア最大のオンラインスーパーマーケットとなっており、ラゴス市内は3時間以内に配達が届くという。また、今年に入ってから、通常は配送1回につき約4ドルかかるが、約7.5ドル払えば30日間配送料がかからないSupermart Primeというサービスも打ち出した。
会社名:Travelbeta.com
創業者:Onyeka Akumah (ナイジェリア大手ネット広告・ネットメディア企業のAnozim Groupも立ち上げている。)
事業内容:旅行予約サイトtravelbeta.comの運営
備考:創業から5ヶ月で50万ドル以上の収益を上げ、200万ドルの資金調達(シード/ ナイジェリアの投資会社Altheus Limited)を行った。
会社名:SureGifts
創業者:Olaoluwa Samuel-Biyi、Adeoye Ojo、Babafemi Lawal
事業:オンラインのギフトカード
会社名:Form+
創業者:Olubusayo Longe
事業内容:アンケート作成サービス(Googleフォームの高機能版)
会社名:Accountinghub
創業者:Chioma Ifeanyi-Eze
事業内容:中小企業向け簿記・会計サービス
会社名:Achebe Professional Services
創業者:Hilary Achebe
事業内容:財務・会計コンサルティング
現在、ナイジェリアを始めアフリカ地域では、スタートアップエコシステムの1世代目を迎えている。Jumia創業者の2人はまだ30代であり、これからさらに若い起業家が増えていくだろう。
最後にナイジェリアとアフリカ地域でのEコマースの市場規模の予想図を紹介して終わる。
参考
Founders of Nigerian online retailer Jumia talk about managing a fast growing business
Jumia: The inspiring story of Nigeria’s online retailer