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M-pesaメモ④東アフリカ初のユニコーン企業!? M-Kopa編(追記)

(追記有り)

今日は、M-pesaを使ったサービスを展開し、東アフリカで今最も注目されているスタートアップM-Kopaを紹介する。

 

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・概要

2011年に、Vodafone, Safaricomのメンバーが中心となってケニアで創業。共同創業者の一人、Nick Hughesの前職はVodafoneで、2007年当時CSR部門にいた彼がM-Pesa事業を立ち上げた。 

同社は、電気の通っていない地方部をターゲットに、ソーラーパネル・各種充電器・照明・ラジオ・SIMカード(モバイルマネーで支払いする用)のソーラー電力キットを提供している。

ケニア、ウガンダタンザニアに展開しており、これまでにそれぞれ26万キット、4万キット、2万キットの総計32万キット販売してきた。また、M-pesaだけでなく、他の大手通信会社MTNやAirtelのモバイルマネーでの支払いも可能としている。

 

資金調達状況

2011年 創業

2011年10月 シリーズA 非公開 Gray Ghost Ventures(米・アトランタ

2012年12月 シリーズB 非公開 Gray Ghost Ventures

2014年 2月 シリーズC 1000万ドル

同上    デットファイナンス 2000万ドル アフリカ商業銀行

2015年 2月 シリーズD 1245万ドル LGT Venture Philanthoropy(スイス), Blue Haven Initiative(米・ケンブリッジ), Lundin Foundation(カナダ)

2015年12月 プライベート・エクイティ 1900万ドル Generation Investment Management(ロンドン) その他個人として、リチャード・ブランソンやスティーブ・ケースも出資している。

2016年5月 デットファイナンス 400万ドル アフリカ商業銀行

 

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Top fundraising rounds by Kenya-based startups in 2015

 

・今後の戦略

M-Kopaの今後進めていく戦略は大きく3つある。

①ソーラー電力キット販売数の拡大

2018年までに100万キットの販売を目指しており、現在の東アフリカ市場の他、ガーナにも進出していく予定だ。

 

②ソーラー電力キットの拡充

今年2月、ソーラー電力で使用できるデジタルテレビを開発し、オプションとしてキットに加えた。今後、冷蔵庫やその他家電製品も開発していき、将来的な家電需要を早期に取り組もうとしている。

 

③金融サービス

M-Kopaの「kopa」はスワヒリ語で「借りる」という意味だ。販売したキットから得られる電力使用量や支払い状況のデータをもとに信用調査を行い、モバイルマネーで融資ができるようなサービスを計画しているという。

 

以下の図で分かるように、アフリカには電気が通っていない地域が未だに数多くあり、アフリカ全人口のうち約60%(≒6.6億人)がM-kopaのようなサービスを求めている状況にある。その結果として、2015年における資金調達額は、ケニアの中で群を抜いている。

少し前、Rocket Internet傘下で様々webサービスを行っているAfrica Internet groupがアフリカ初のユニコーン企業として話題になったが、アフリカ独自の事業を行っている企業としては初めてユニコーン企業となるのは、このM-Kopaではないだろうか。

 

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These charts show reliable electricity is still a luxury for more than half of Africa — Quartz

 

 

参考

【アフリカ市場】 夜明けを迎えるソーシャルビジネスを 成功させるリーダーシップとは 日本総合研究所ヨーロッパ新興国&社会的投資リサーチャー 槌屋詩野|Ms.BOPチームの「新興国ソーシャルビジネス」最前線|ダイヤモンド・オンライン

Lightbulb moment for M-Kopa - FT.com

Solar startup M-KOPA leapfrogs Africa’s electricity grid | TechCrunch

M-pesaメモ③アフリカFintech環境編

今日は、アフリカのスタートアップメディアVC4AよりアフリカのFintechに関する情報を紹介する。

 

アフリカFintechに関するいくつかの数字

88%(≒10.5億人): アフリカ全人口に占める銀行口座を持っていない人の割合

1.83億人: モバイルウォレットを利用している人数(アメリカの3倍)

2.97億人: インターネットユーザー

1.04億人: アクティブSNSユーザー

600億ドル: 携帯通信会社の市場価値(market worth)

2340億ドル: 2020年までに予測される携帯通信会社の市場価値(market worth)

5300万ドル: 現在、Fintechを通して取引されている金額

1.2億ドル: 2020年までに予測されるFintechを通して取引金額

 

Into Africa – The rise and success of FinTech Startups

 

 

 

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抜粋 The Global Mobile Money Landscape - Blog - MEF

 

 

 

 

M-pesaメモ②国別編

今日はM-pesaに関連して、代表として4カ国について紹介する。

 

1. ケニア

1900万人を超えるユーザーのいるM-pesaが最も普及している国で、人口が約4400万人で、年少人口(〜14歳)が48%であることを考えると、携帯を所持している人の大半が利用していることになる。

ケニアの人口 - 世界経済のネタ帳

 

2015年の取引回数は約41億回で、2014年の約28億回から倍近く伸びていることからも、いかにケニアでの生活の中でM-pesaが欠かせないサービスとなっているかが分かる。一方、1日当たり100万件の取引を処理するのは技術的にはかなり難しく、これまで送信がうまく処理されないという問題も起きているため、この問題を解決できるかが今後の発展の鍵となる。

 

2. 南アフリカ

2014年に進出したものの、登録者数100万人のうちアクティブユーザー数はわずか7.6万人と伸び悩み続け、2016年6月を持って撤退すると報じられた。

最大の敗因は、すでに銀行システムが発達していることだ。南アフリカの成人のうち77%は口座を持っており、わざわざM-pesaを使うという人が少なかった。これは、M-pesaの限界とも言える。銀行システムが発達していない地域を中心に攻めるしか生き残る道は無く、その方向に集中していくという宣言なのではないだろうか。

 

3. ナイジェリア

人口1.73億人のアフリカ最大の国。銀行を利用していない人の数が多いことに加え、通信網は発達しているにもかかわらず、M-pesaは進出できていない。それどころか、モバイルマネーの利用者数は約80万人しかいない。

アフリカのAmazonと言われているKongaJumiaなどEコマースは伸びているにも関わらず、なぜ送金サービスは未だ普及していないのだろうか。その理由は、ボコ・ハラムを筆頭とするテロ組織の存在にある。

近年もテロ組織による被害を受け続けているナイジェリアでは、テロ行為の温床になり得る通信サービスと金融サービスの規制が他国に比べ非常に厳しいものになっているのだ。通信分野では、今年に入って、MTNがSIMカード未登録でサービスを提供していたことが発覚し、52億ドルというとてつもない罰金を科されている。

テロ組織の活動という極めて対処し難いリスクがあるものの、市場の大きさを考えると魅力的な進出先であることは間違いない。

 

4. インド

2013年に進出し、既に1.7億人のVodafoneユーザー(インド第2位)がいて、潜在的な成長率は高いのだが、また伸び率は緩やかで150万人しかM-pesaに登録していない。これは、今のインドの規制上、銀行と提携しなければモバイルマネーで現金を引き出すことができず、主要なM-pesaユーザーは提携先のICICI銀行の顧客に限られているという現状がある。(注:送金や領収書の請求・支払いは提携無しでできる)

 

しかし、可能性はアフリカ諸国より大きいかもしれない。

インドはケニアとは違い、銀行システムが発達しているが、都市部に偏っているという。国内に10万店ある銀行支店のうち、地方部には5%のみだ。加えて、インドの携帯電話利用客は9億人にのぼり、そのうちの40%は地方部にいる。そのため、都市部への出稼ぎしている人からの送金や、地方部でのお金のやり取りといったニーズはかなり大きい。また、競合である通信最大手のAirtelは主要な銀行と提携できていないため、お金のやり取りしか扱えず、通信大手3番手のIdea Cellularは都市部の顧客をターゲットにしており、M-pesaが力を入れようとしている地方部には進出していない。 

さらに、M-pesaをもっとスケールさせていくために、SMSではなくインターネットを使ったアプリ版をリリース予定だという。アメリカや中国のインターネット大手企業もどんどん力を入れていくあろうインド市場でアフリカ発のM-pesaがどのように発展していくのか注目である。

 

参考

Why Mobile Money transformed Kenya, but failed to take off in Nigeria | Institute of Economic Affairs

Vodacom has given up on revolutionary mobile money service M-Pesa, in South Africa — Quartz

Can mobile money transfer service M-Pesa succeed in India?

 

M-pesaメモ①

今日からはまず、アフリカ発テクノロジーの代表であるM-pesaに関連することを書いていく。

 

・そもそもM-pesaとは

2007年、英通信大手Vodafoneの子会社SafaricomがCSRプロジェクトとしてケニアで始めたSMS(ショートメッセージサービス)を用いた送金サービスのこと。特徴は、わずかな手数料で少額でも送金できることだ。

「治安が悪い街中では現金を持ち歩きたくない」、「出稼ぎで得た賃金を田舎の家族に送金したい」、というニーズを満たしたM-pesaは、ATMなどの銀行システムが無い途上国を中心に瞬く間に普及した。昨年のユーザー増加率は27.1%で、11か国2500万人を超える利用者がいる。

SafaricomあるいはVodafoneとして単独では以下の国に展開している。

2007年 ケニア

2008年 タンザニア

2012年 コンゴ民主共和国

2013年 エジプト、モザンビークレソト、インド(次回以降詳細)

2014年 ルーマニア南アフリカ(2016年6月撤退、次回以降詳細)

2015年 ガーナ、アルバニア

さらに、昨年南アフリカ大手通信会社のMTNとパートナー契約を締結したため、M-pesaが利用できる国数は26カ国にまで増えている。

 

・M-pesaはどのような仕組みなのか

一般的な利用例として、AさんがBさんに500円を送金したいという状況を想定すると、

①Aさんが近くのM-pesa代理店に行き、そこのCさんに送金したい500円を支払う。

②Cさん(M-pesa)からBさん宛てに「Aさんから500円送金された」というメールが送られる。

③M-pesaからのメールを確認したBさんは、近くの代理店に行き、そこのDさんにメールを見せる。

④メールを確認したDさん(M-pesa)が、Bさんに500円を支払う。

という流れで送金が行われる。インターネットではなくSMSを使用しているため、インターネットが十分行き届いていない地方部でも送金できるというのが、一気に広まった要因の一つである。

 

現在では、単なる送金に留まらず、給与の受け取りや学費納入、農業の補助金支給、光熱費の支払いなどにも使われることもある。