アフリカメモーChururu si ndo! ndo! ndo!

アフリカのスタートアップ、ビジネス、技術を中心に気になったことをコツコツ書いていきます。

アフリカのインターネット業界の動向を知るなら大手通信業者の動きを見るべき

アフリカ地域のスタートアップ関係の記事を読む中で分かることの一つが、大手通信業者の影響力の大きさだ。特に、ケニアのSafaricomの動きは注目すべきであり、もはや世界的に名を知られるようになったM-pesaに留まらず、配車アプリや中小企業向けコンサルティングといった新しい領域に進出している。モバイルマネーに関しては、Safaricomの他にも、MTN、Airtel、Orangeも軒並み取り組んでおり、通信業と金融業の境界がどんどん曖昧になっていくように感じる。

また、今アフリカ地域で最も資金調達を実施しているJumia GroupにMTN、Milicom、Orangeは出資しているし、Safaricomはファンドを組成しシード投資を行っている。最近、アフリカ地域に力を入れているUberやWeChat(テンセント)といった海外企業ももちろんだが、大手通信業者の動きは同様にチェックすべきだろう。

そこで調べてみると、Wikipedia中東アフリカ地域の国別通信事業者一覧なるページがあったので、アフリカ地域の2015年における人口上位10カ国のデータをメモしておく。()内は2015年の人口→2030年の人口を載せている。

下の表を見れば分かる通り国ごとに状況はバラバラだが、MTN、Airtel、Orange、Milicom、Safaricom(Vodafone)、Etisalatあたりはアフリカ地域の複数の国に展開しており、影響力が大きい。

 

1. ナイジェリア(約1.79億人→約2.63億人)

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2. エチオピア(約9000万人→約1.38億人)

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3. エジプト(約8800万人→約1.17億人)

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4. コンゴ民主共和国(約8200万人→約1.20億人)

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5. 南アフリカ(約5500万人→約6000万人)

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6. タンザニア(約4800万人→約8300万人)

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7. ケニア(約4400万人→約6500万人)

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8. アルジェリア(約4000万人→約4800万人)

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9. ウガンダ(約4000万人→約6200万人)

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10. スーダン(約3800万人→約5600万人)

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ちなみに、2030年における日本の人口は約1000万人減少して1.17億人になるとされている。

 

参考

アフリカの人口ランキング - 世界経済のネタ帳

統計局ホームページ/世界の統計2016

アフリカ最大のeコマース企業Jumiaから生まれるナイジェリアスタートアップエコシステム

今回、ナイジェリアから生まれたアフリカ最大のeコマース企業Jumiaとそこから飛び出し新たに起業したJumiaマフィアたちを紹介する。

 

Jumiaとは

2012年に創業したeコマース企業。2015年の売上高は約1.5億ドルとなり、前年比117.8%増となっているアフリカ最大のeコマース企業の1つ。現在は、アフリカ11カ国に展開している。(ナイジェリア、コートジボワール、ガーナ、カメルーンセネガル、ケニア、タンザニアウガンダアルジェリア、エジプト、モロッコ)

 

2012年5月 創業

TundeとRaphaelがKusuwa.comを創業

2012年6月 Rocket Internetからの出資

南アフリカでZandoの立ち上げに成功し、次の狙いをナイジェリアに定めていたAfrica Internet Holdingsの目に止まり、約250万ドルの出資を受ける。このときに、Oliver SamwerにスカウトされたHendrik Harrenが3人目の社員となる。
(Africa Internet Holdings - Rocket Internetがアフリカ地域に進出した際に立ち上げ、その後アフリカ通信大手MTNとMillicomが出資した。現在は、Africa Internet Groupという名前になっている。)

2012年9月 Sabuntaと合併

Rocket Internet傘下でファッションeコマースを展開していたSabuntaと合併。Jumiaに変更。

2012年10月 JP Morganから出資

金額は公表されていないが、"real turning point"だったと創業者は語っている。

2013年3月  シリーズA

Summit Partnersから2600万ドルの資金調達。

2013年6月  シリーズB

アフリカ大手通信会社Millicomから3500万ドルの資金調達。

2014年11月 シリーズC

Summit PartnersとMillicomから1.5億ドルの資金調達。

2016年3月 資金調達(Africa Internet Group全体)

仏保険大手AXA、Goldman Sachs、MTN、Rocket Internetから約3.3億ドルの資金調達。

2016年4月 資金調達(Africa Internet Group全体)

通信大手Orangeから8500万ドルの資金調達。

 

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創業者

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Tunde Kehinde(右)

ナイジェリア生まれ。アメリカのハワード大学卒業後、米金融機関を経て、イギリスの酒造メーカーでアフリカ展開のための買収戦略などを手がける。そして、2011年にハーバード・ビジネススクールを卒業し、ガーナ人の同級生とともにアフリカのエリートのためのSNSサイトBandeka.comを立ち上げた。2012年にRaphaelと出会い、意気投合してKusuwa(後のJumia)を創業する。2014年1月にJumiaを辞め、ACE(下記参照)を立ち上げる。現在、34歳。

Raphael Afaedor(左)

ガーナ生まれ。チェコの大学でコンピュータサイエンス(学士、修士)を、スイスの大学でマーケティング(修士)を学んだ後、2007年にハーバード・ビジネススクールに入学。卒業後は、米大手求人サイトMonster.comのプロダクト・マネージャー、アフリカ北西部の大手農薬メーカーでマーケティング&セールスのトップを務める。2011年にナイジェリアで、グルーポンに似たサービスQluQluを立ち上げる。2012年にTundeと出会い、意気投合してKusuwa(後のJumia)を創業する。2014年にJumiaを辞め、Supermart.ng(下記参照)を立ち上げる。現在、37歳。

 

 Jumia マフィア

Jumiaをアフリカ最大のeコマースと言われるほどに大きく成長できた要因として2つのポイントを挙げている。1つ目は、資金調達であり、ただ単に金額が大きかったということでなく、ノウハウやネットワークをもつ会社と連携することができたのが効果的だったと述べている。そして、2つ目が採用である。「The best people for the best team」を掲げ、国内外問わず若く優秀なナイジェリア人とRocket Internetから来た経験豊富なメンバーが集まったことが非常に大きかったという。

アメリカのフェアチャイルドペイパル、日本のネットエイジから数々の偉大な起業家が輩出されていることから分かるように、黎明期の激動を乗り越えたスタートアップからは多数のスタートアップが生まれる。そこで、Jumiaマフィアから生まれたスタートアップを7社紹介する。

 

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会社名: ACE (Africa Courier Express)

創業者:Tunde Kehinde、Ercin Eksin

事業内容:eコマースのための物流・配送サービス

備考:2015年2月には、SafaricomのCVC、Interswitch、Africa Angels Networkから300万ドルの資金調達を行っている。

 

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会社名:Supermart.ng

創業者:Raphael Afaedor

事業内容:生鮮品eコマース

備考:現在、70000点以上の商品を扱っているナイジェリア最大のオンラインスーパーマーケットとなっており、ラゴス市内は3時間以内に配達が届くという。また、今年に入ってから、通常は配送1回につき約4ドルかかるが、約7.5ドル払えば30日間配送料がかからないSupermart Primeというサービスも打ち出した。

 

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会社名:Travelbeta.com

創業者:Onyeka Akumah (ナイジェリア大手ネット広告・ネットメディア企業のAnozim Groupも立ち上げている。)

事業内容:旅行予約サイトtravelbeta.comの運営

備考:創業から5ヶ月で50万ドル以上の収益を上げ、200万ドルの資金調達(シード/ ナイジェリアの投資会社Altheus Limited)を行った。

 

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会社名:SureGifts

創業者:Olaoluwa Samuel-Biyi、Adeoye Ojo、Babafemi Lawal

事業:オンラインのギフトカード

 

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会社名:Form+

創業者:Olubusayo Longe

事業内容:アンケート作成サービス(Googleフォームの高機能版)

 

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会社名:Accountinghub

創業者:Chioma Ifeanyi-Eze

事業内容:中小企業向け簿記・会計サービス

 

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会社名:Achebe Professional Services

創業者:Hilary Achebe

事業内容:財務・会計コンサルティング

 

現在、ナイジェリアを始めアフリカ地域では、スタートアップエコシステムの1世代目を迎えている。Jumia創業者の2人はまだ30代であり、これからさらに若い起業家が増えていくだろう。

 

最後にナイジェリアとアフリカ地域でのEコマースの市場規模の予想図を紹介して終わる。

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参考

Founders of Nigerian online retailer Jumia talk about managing a fast growing business

Jumia: The inspiring story of Nigeria’s online retailer

E-Commerce in Nigeria: The Jumia Story | Naija247news

Jumia, Nigeria: How a local e-commerce startup became a multimillion dollar company in less than a year

2016年のアフリカ・インターネット・トレンドメモ①(2016 Internet Trends by Mary Meekerより抜粋)

全世界のIT関係者が毎年読み込んでいるInternet Trendsから、アフリカに関係するデータを抜粋していく。今回は、1章と2章をメモした。

KPCB INTERNET TRENDS 2016 |

 

1) GLOBAL INTERNET TRENDS

全世界でのインターネット利用者は約30億人(42%)で年々増加しているが、伸び率は徐々に小さくなっている。

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先進国を中心に伸び率が小さくなっている一方、インドでは前年比40%増加の2.77億人となったものの、いまだ浸透率は22%である。インド市場のポテンシャルの高さが伺える。

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スマートフォン利用者の増加率もインドや中国を含むAsia-Pacificが圧倒的に大きく、2015年では全世界のスマホ人口の52%を占めている。一方、アフリカ地域と中東地域を含むMEA(the Middle East and Africa)は南アメリカ地域と同様の水準である。

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次に、スマートフォンの価格についてだ。青色の途上国と紺色の先進国で、所得におけるスマホ価格の比率が大きく異なっている。アフリカでは、TECNOやファーウェイといった中国のメーカーが低価格スマホを販売しているものの、通信料金も加味すると、十分普及するにはまだ価格の壁が高いようだ。

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2) GLOBAL MACRO TRENDS

まず、アフリカの経済に大きく影響を及ぼす事実は物価の下落である。東アフリカ諸国を除くと、ほぼ全てのアフリカ諸国の輸出は資源に依存している。アフリカ経済全体の4分の1の規模をもつ最大の経済国ナイジェリアでも、そのGDPの4割は石油・天然ガスによるものである。

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全世界の実質GDPに占めるアフリカ・中近東(+その他)の割合は、30年前と変わらず9%のままである。

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出生率は、サブサハラアフリカ地域が他地域より大幅に高いものの、1985年頃から緩やかに減少している。一方、平均寿命も他地域より短いが、2000年頃から急激にその差が縮まっている。

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初のTICADアフリカ開催!ケニアのスタートアップ7選

今年、6回目を迎えるTICADは初めてのアフリカ開催として8月27・28日にケニアで開かれる。そこで、2015年に資金調達を行ったケニアに拠点をもつスタートアップを紹介する。

 

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Top fundraising rounds by Kenya-based startups in 2015

 

1. M-Kopa 資金調達額 3145万ドル

創業:2011年 

事業内容:エネルギー(ソーラー電力)

M-pesa事業を立ち上げたNick Hughesが中心となって創業した。ソーラーパネルと、LEDライトや充電器などの電化製品をセットを最初は低価格で販売し、それから使用量分と残りのセット代金を定期的にモバイルマネーを通して徴収していくというビジネスモデルで、一回に支払わなければならない値段が低いことが受け入れられ、大きく普及している。現在では、オプションとしてテレビや冷蔵庫といった電化製品の充実を図っており、これから増える中間層の電力&家電需要を一気に抑えようとしている。さらに、その支払いデータをもとに、最終的には金融サービスまで行う考えだ。

M-pesaメモ④東アフリカ初のユニコーン企業!? M-Kopa編(追記) - アフリカメモーChururu si ndo! ndo! ndo!

 

2. Angaza 資金調達額 400万ドル

創業:2010年

事業内容:エネルギー(ソーラー電力)

スタンフォード大を出て、Amazonで働いていたという経歴をもつLesley Marincolaが創業し、現在サンフランシスコとナイロビに拠点を構えている。モバイルマネーで支払うことによってソーラー電力を利用できるという点は、M-Kopaと同じと言える。しかし、Angazaは、支払われたモバイルマネーの金額に応じて電力を使用可能にするソフトウェアの開発のみを担当しているという点がM-Kopaとの違いだ。ソーラーパネルの製造業社や現地の流通業者とパートナーを組んでいるため、現地の規格の製品を作る必要がない上に、既存の流通経路を抑えることができ、事業展開をスムーズに行うことができている。その結果、アフリカ6カ国とインド、パキスタンにも進出している。

Angaza Raises $4M To Make Clean Energy Affordable For World’s Poorest | TechCrunch

 

3. BRCK 資金調達額 300万ドル

創業:2013年

事業内容:通信(Wi-Fi

高機能なポケットWi-Fiメーカー。140カ国で使用可能かつ頑丈で、使い方が簡単でバッテリーが長持ちし、そして、クラウド上で利用状況を管理することができる。創業チームは、これまでに情報収集用地図アプリケーションUshahidiを開発したり、ナイロビにあるコワーキングスペースiHubの運営に関わっていたりとアフリカスタートアップ界で経験値が高い面々である。教育分野に力を入れており、学校単位でも導入を推し進めている。

個人投資家として、M-Kopaにも出資しているスティーブ・ケースの名前もある。

This BRCK Will Revolutionize Education In Africa

アフリカの過酷な環境下でも使用可能なSIMフリーモバイルWi-Fiルータ「BRCK」 - GIGAZINE

 

 

4. Kopo Kopo 資金調達額 210万ドル

創業:2010年

事業内容:金融(商業向けマイクロローン)

中小規模小売店のためのソフトウェアサービスを提供している。主な機能としては、モバイルマネーの支払い(M-pesaを扱うことのできるSquare、というと想像しやすいだろうか)、帳簿管理、SMSマーケティングなどがある。出資VCの中にはKhoslaの新興国向けファンドも入っている。

Pando: Kopo Kopo: Building the "Square of Africa" amid terrorism, monopolists, and huge opportunity

 

5. Asoko Insight 資金調達額 135万ドル

創業:2013年

事業内容:ソフトウェア(企業データベースサービス)

現在、ケニア・ガーナ・ナイジェリアで1000社の企業情報のデータベースを運営しており、情報量としてはまだ多いとは言えないが、アフリカ版ユーザベースと言える。 

Singularity Investments backs Asoko Insight

 

6. BitPesa 資金調達額 110万ドル

創業:2013年 

事業内容:金融(ビットコイン

バイルマネーM-pesaで有名なケニアでは、新たな金融サービスとしてビットコインにも注目が集まっている。SMSを使ってビットコインの送金サービスを提供しており、仕組みはM-pesaと似ているが、手数料がかからないというのが特徴だ。(法定通貨に替えるときには手数料がある。)

アフリカ発のSMSビットコイン送金サービスBitPesaが110万ドルの資金調達を実施 | ビットコインの最新情報 BTCN|ビットコインニュース

 

7. OkHi 資金調達額 75万ドル

創業:2014年 

事業内容:ソフトウェア(位置情報サービス)

日本に生活していると想像すらできないが、世界には「住所」をもっていない人が約40億人いると言われている。「住所」は郵便や各種証明、緊急サービスなど非常に重要な情報である。そこで、OkHiはGPSデータと軒先の写真から住所データを提供するサービスを行っている。eコマースがこれから伸びると言われているアフリカにおいて、「住所」は不可欠な要素であるという点からも大きく注目されており、Googleで7年間CFOを務めたパトリック・ピシェットも投資している。

Kenyan addressing startup OkHi raises $750k funding

 

 

 

 

ケニアのVCが教えるアフリカのテック業界を見る際に考えるべき5つの視点

今回は、ケニアのシード向けVCであるSavannna Fundの共同創業者Mbwana Alliyが2015年末に書いた2016〜2020年におけるアフリカのテック業界に関するブログ記事をざっくりと紹介する。

Savanna Fundは現在アフリカ6カ国、21の会社に投資を行っている。

 

1. テック業界においても、中国の影響力は欧米に増してより活発になっていく。

ハード面だと、TECNOやファーウェイが、100ドル以下のスマホを、そして、シャオミが150〜300ドルの価格帯のスマホを販売していて、アフリカにおけるスマホ普及率を押し上げている。

ソフト面で言うと、「プラットホーム」戦略を推し進めているテンセントのWeChatが代表に挙げられる。現在、WeChatはアフリカ市場に随分力を入れており、南アフリカオンデマンド配送サービスPicupモバイルウォレットをローンチしていたり、340万ドルのアーリーステージ向けのVCを創設していたりと活発な動きを見せている。この背景には、テンセントへの出資企業の中に、アフリカ最大手のメディア企業ナスパーズがいることが大きい。

昨年末には、習近平国家主席が今後3年間工業化支援や農業近代化、インフラ整備などに総額600億ドルの資金援助を行う方針を明らかにしていて、国家としてアフリカ戦略を推し進めており、官民でアフリカへの影響力は高まっていく。

 

2. CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)は増えているが、彼らの戦略をはかるには2年くらいはかかる。

2015年、企業によるベンチャー投資が多く見かけられた。代表としては以下が挙げられる。

Spark Fund(SafaricomのVC 総額100万ドル)約21.6万ドル

Sendy(物流系)

ePayment Grouth Fund(InterswitchのVC 総額1000万ドル)約85万ドル 

Africa Courier Express(物流系)

その他にも、アクセラレータプログラムやワークスペースの設立や、マイクロソフトやグーグル、フェイスブックによるアクセス向上支援など、様々な動きが見られている。

ここで留意しておきたいのは、これらの取り組みが長期的視点に基づいたものなのかどうかを判断するに少なくとも2年程度かかるだろう。

 

3. アフリカ全域にサービスを広げていくことは正しい戦略と言えるが、その道のりは険しい。

今後、アフリカ全体の人口は、インド、中国に次ぐ規模となっていくとされており、そのアフリカ市場への期待は非常に大きい。しかし、「アフリカ」を一つの市場とみなすのは誤りで、それぞれの国で全く事情が異なることに注意すべきだ。例えば、ナイジェリアではテロ組織の温床となる危険性を考慮して、通信や金融サービスの規制が非常に厳しいということや、ケニアではM-pesaが国民のインフラとなっているため、彼らとうまくやっていく必要性があるということだ。

 

4. アフリカのスタートアップにとって最大の制約は、優秀な人材であることは変わらない。

アフリカの優秀な若者の多くは、アメリカやイギリスへ留学し、そのまま向こうの大企業に就職してしまい、実家へ仕送りをするが、帰ってはこないというケースが依然として多い。そのため、より良い投資環境があり、優秀な人材を集めやすいシリコンバレーを始めとする欧米へと移転しているスタートアップもいくつか見受けられる。CEOやCOOといった経営陣からエンジニアに至るまで優秀な人材が集まる環境づくりが今後も課題であり続けるだろう。

 

5. アフリカにいる「次の5億人」はエネルギーと通信・インターネットの統合にかかっている。

M-Kopaを代表例として、電力と通信の分野に力を注いでいるスタートアップが活況を迎えている。 M-Kopaの他にも、Off Grid Electric、d.light,、WASSHA(日本発ベンチャー)といったスタートアップがソーラー電力を扱っており、未電化地域がどんどん変わっていくだろう。また、通信の分野では、グーグルやフェイスブックといったシリコンバレーの巨人たちが、積極的な投資を行っている。そして、この電力分野と通信分野の両方の鍵を握るのは、通信会社と現地政府だ。例えば、フェイスブックはAirtelと組んでナイジェリアで"Free Basics"を展開している。MTN(南ア)、Vodafone(英)、Airtel(インド)、Orange(仏)、Etisalat(UAE)の5大通信企業の動きには要チェックだ。

 

参考

5 Africa Tech themes to Watch from 2016-2020 — Savannah Fund

 

過去の関連記事

duntuka.hatenablog.com

アフリカの農業を変える!農業×ITスタートアップ5選

 

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 1. FarmDrive(ケニア)

今までローンを組むことができていなかった小規模農家と金融機関をつなぐサービスを展開している。農家が、SMS(ショートメッセージ)あるいはアプリを通して、営農活動を逐次書き込み、FarmDriveに送信する。すると、FarmDriveが日々の活動内容から、営農活動の安定性・貸し倒れのリスクを解析し、その農家の信用調査としてデータ化する。そして、その農家に応じた営農に関するアドバイスレポートを送信している。

ビジネスモデルは、金融機関が1人の農家の信用調査にアクセスするごとに1ドル、そして、実際にローンが組まれたときに農家から手数料として3%を徴収するという仕組みである。

東アフリカの農家で、商業ローンを組むことができているのは、全体の1%にも満たない。このサービスを通して、生産性を上げるための投資資金を賄うことができれば、アフリカの農業が一気に伸びる可能性がある。

'Telephone farmers' reaping the benefits of agri-tech - BBC News

FarmDrive: De-risking lending to smallholder farmers

 

 

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2. Mifugo.Trade(ケニア)

"mifugo"とは、スワヒリ語で「家畜」を意味する。その名の通り、家畜(牛がほとんど)のマーケットプレイスサービスを行っている。ケニアやタンザニアでは家畜の交易が盛んに行われてきたが(ケニアの牧畜家数は約600万人)、売買人が各地方に散在していたため、取引内容が不透明で仲買人が多くのマージンを持っていってしまう場合が多かった。それが、このサービスによって、家畜の性別、状態、写真などの項目を閲覧し、値段交渉を行うことができるようになる。

Mifugo.Tradeは取引が成立した価格の4.5%を手数料として徴収することで利益を上げる仕組みを取っており、まずケニアの市場を抑えに行こうとしている。

Mifugo.trade seeks $100k to digitise livestock trading in Kenya

 

 

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3. WeFarm(イギリス)

世界中の農家がSMSやインターネットを通して農業のノウハウを共有することができるサービスを展開している。ある農家が、質問したいことをSMSあるいはインターネット上のサイトで内容を送信すると、WeFarmが世界中にいるユーザーの言語に合わせて内容を翻訳し一斉送信し、返って来た内容を皆に共有するというものだ。

質問内容や閲覧内容に応じたターゲット広告によって、収益を上げる計画だという。

現在は、主にケニア、ウガンダ、ペルーにユーザーが多く、その数43,000人だ。世界には約5億人の小規模農家がおり、彼らの多くは携帯電話を所持している。昨年、Google VenturesやKPCBなどから1500万ドルの投資を受けたFarmers Business Networkとターゲットは違うが、ノウハウ共有という点では似たようなサービスであると言える。「農家のためのSNS」はこれからどんどん普及していく流れは間違いない。 

UK Tech Venture Drives Peer-To-Peer Revolution In Africa And Peru

The peer-to-peer SMS network helping farmers connect (Wired UK)

 

 

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4. SokoNect(ケニア)

農業資材のマーケットプレイスサービスを行っている。これまで東アフリカで行われているピッチコンテストで数々の受賞を手にしていて、注目されていることがうかがえるものの、実際のサイトを見てみるとまだ商品は十分揃っておらず、まだ始まったばかりのようだ。

 

 

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5. mPedigree(ガーナ)

偽装薬がどうかをSMSを使ってわずか7秒で判断できるサービスを行っている。mPedigreeと契約を結んだ製薬会社は、その工場でランダムな12桁の数字が書かれたスクラッチカードを薬のパッケージに貼り付ける。そして、購入者がその数字を携帯電話で照合することで、どこの会社が製造したかが判明するという仕組みだ。アフリカの多くの国では、20%の確率で偽装薬が紛れ込んでいるという。これは、農業市場における種子や農薬などにも当てはまる問題である。

ガーナ、ケニア、ナイジェリア、インドに既に進出し、ウガンダタンザニア南アフリカバングラデシュで試用中という途上国を中心に非常に注目を浴びているサービスだ。

 

参考

5 African e-farming startups to watch

注目すべきアフリカで活躍する5人の女性起業家

この前まで、ルワンダで開催されていたWorld Economic Forumで、「Africa's top woman innovators」で表彰された5人の女性起業家を紹介する。

 

Nataliey Bitature

Musana Carts 共同創業者、 カンパラウガンダ

Musana

ソーラー電力で動く調理器と冷蔵庫を兼ね備えた屋台を製作、販売しようとしている。現在、製品はIndiegogoクラウドファンディングを行っている。

これまでは、木炭やケロシンで調理し、冷蔵庫は扱えないような屋台を多かったので、環境にも優しく、現地の衛生状況の向上にもつながるとされている。昨日、紹介したM-Kopa同様にソーラー電力を扱っているサービスであることからも、いかに電力が関心の的となっているかがわかる。

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Audrey Cheng

Moringu School 共同創業者、 ナイロビ(ケニア)

Home: Moringa School

プログラミングスクールの運営を行っている。フロントエンド(HTML/CSS)、バックエンド(Python/Django)、そしてAndroidを学び、実際にプロダクトを作ってみるところまでを16週間で行うカリキュラムとなっている。

既に開講してから2年が経っており、卒業後の給与が平均で350%増加したという。日本でもTECH::CAMPを始めとしてプログラミング学習サービスを行う企業が増えてきたが、アフリカでもその流れは起きている。

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Lilian Makoi Rabi

Edgepoint 共同創業者、タンザニア

Edgepoint Tanzania

Airtel, Vodafone, Tigoなどと契約しているタンザニアインターネットプロバイダー企業。その本業の他に、bimaAFYAとbwanaSHAMBAという2つの新事業を行っている。

bimaAFYAは、「マイクロ健康保険」と言える事業で、利用者は携帯電話だけで簡単に手続きを行うことができるのが特徴。bwanaSHAMBAは、ショートメッセージと電話を使って、農業コンサルを行うサービス。 

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 Nneile Nkholise

iMed Tech Group 創業者、 ブルームフォンテーン南アフリカ

 胸や顔に、ガンや火傷によってできた傷の補綴を設計し製造している企業。(補綴とは、体の欠損した部位を人工物で補填するもののこと。)

機械工学を専攻した30歳以下のアフリカ出身の女性のみを採用するという方針を取っている。

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Lariss Uwase

Carl Group キガリルワンダ

 サツマイモから新たな食料を開発したり、野菜からパスタをつくったりと健康な食生活を提供している食料メーカー。

 

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参考

Meet WEF’s top five African female innovators - Ventures Africa